バキマイストーリー

自分の人生を振り返りながら、苦しかった事、辛かった事、嬉しかった事と向き合って綴って行きたいです。

深まる暴力と赦せる心。

2年生になる頃の話をもう少ししたいと思う。

集合写真を見てじゃないと俺もあの頃に何が起きていたのか全く思い出せない、記憶が途切れ途切れで友達との事を思い出そうとしても頭の中に霧がかかった様にモヤつき、そして蘇ってくるのは深まる大人達の暴力の記憶。

1年生の担任の先生は萩原(ハギワラ先生だ。

萩原先生はメガネでロマンスグレーの少しダンディーな先生だ決して体格が良い訳ではないが部活の顧問もしていてバランスの良い50代中頃の風貌だ。よくゲンコツ👊を貰った物だが特段、嫌な感じもなかった。ただ怖かったのは、ある生徒が授業中に紙ヒコーキを飛ばしていたら萩原先生が無言で立ち上がり、その生徒の襟元を掴んで机を薙ぎ倒しながら軽々と廊下に放り投げていた事だ。

その光景には恐怖心が芽生え、萩原先生の前で紙ヒコーキを飛ばそうと思う奴はもう現れないだろう、俺じゃなくて良かった…と心から思った(笑

そして何事も無かったかの様に又授業が始まるのが何とも恐ろしく…あの光景が脳裏に焼き付き勉強に身が入らなかったのを覚えている。

だとしても、普段の萩原先生は物凄く優しくてカッコ良くて笑顔が素敵で、こんなお父さんだったら良いなと父親像を重ねていたと思う。

※この時まだ僕は、性に目覚めていないにも関わらず大人の男性に父の姿を重ねたりしてたんだと思った。

2年生になった時の担任は石野(イシノ)という先生だ。

石野は他の先生とは違う何処か嫌な雰囲気がした。メガネをかけているが体格もガッシリしていて髪は80年代のサラリーマン風に横に流している、野球部の顧問でもあり熱血で理不尽で男子生徒には暴力と支配を、女子生徒にはセクハラとも思えるくらい距離感だったのを覚えている。

見ているだけで気持ちの悪さが伝わってくるくらい女子にはベタベタしていた。(思い出すだけで今でも嫌悪感を感じる)

石野は男子生徒なら見境なく手を挙げる、凄く記憶に残っているので先の話をするが四年生の頃だったと思う、体育授業中のランニングの時だ隣の子に話しかけられた僕は、話しながらランニングをしていた。隊列を乱さず皆んなゆっくりしたペースで走っていた、バコーン!!その瞬間景色が真っ白になり、気がつくとグランドの上に砂まみれになって横たわって居た。顔がジンジンするし頭がグラグラする…耳鳴りも酷くて、軽く脳しんとうを起こしていたと思う。

その後、誰かに呼びかけられ気がついた。とても怖くて恐ろしくなった俺は、フラ付きながら体操着のまま家に帰ろうとするも、石野から逃れる事はできず保健室へ連れて行かれた。

もちろん、なんの説明も出来なかったし、その時は今ほど何が起きていたのかも分からなかったからだ。何やら保健室の先生が俺の顔を治療をしてくれているが放心状態だった、この時は泣く程の感情がないくらい心が疲弊していた。

その時の事をある生徒が教えてくれた事があって、石野が俺をぶん殴ると俺は数メートル程吹っ飛んでたと教えてくれた。なんとも恐ろしい話だ、大人の力で子供を殴れば一歩間違えれば死んでいただろう。(神様が丈夫な体を与えて下さった事に感謝します。

その日家に帰宅すると、

直ぐに母が俺の顔の異変に気付いた。それもそうだ、朝送り出した時に見覚えのないアザが確か左頬にガッツリと浮き上がっていたのだから、

母は直ぐ様『誰にやられたの?!』と問いただしてきたがその時、一回は誤魔化した気がする、、母に心配かけたくないし迷惑も掛けたくない、何よりも石野の暴力と支配がとてつもなく怖かった。

でも母は引かず『嘘!誰にやられたのか正直に言いなさい!』と言われてようやく溜まっていたものが溢れ出して大泣きしたのを覚えてる。

凄く怖かった、吹き飛んだあの時も、母に伝えてる今この時も、そして明日以降もどうなるかと考えると恐ろしくて学校へ行くのがとても怖くなった。

泣き止むとようやく母に何があったのかを説明したんだと思う『石野先生に殴られた』そう伝えると母は凄く怒って学校に連絡を入れていたと思う。

そして直ぐに、その日が訪れた。

俺は怯えながらも母と2人で学校へ向かった、時間帯は良く覚えて居ないが職員室横の校長室へ行くと別室を用意しているというので案内されて少し大きな視聴覚室だったかも知れない部屋に通されると、そこには石野ともう1人先生が居た気がする。

身がすくんでいる俺を尻目に母は構わずに入って行く、、俺の中には先日起きた事がまだ脳裏や身体に残っていて怖くて目も合わせられず、石野と対面に案内された席に座り母の隣でずっとうつむいていた。

何やら大人達が話をしているが俺には全く耳に入ってこないが時折、市野が『申し訳ない』という言葉を耳にしてビクッとしてしまう、あの低く濁った声を聞くだけで怖くて仕方がない。

すると母が『うちは、私がしっかり叩いて教えていますから、先生が叩く必要はありません!大事にしてる子供の顔をなんで叩くんですか?』

(母よ嬉しいけども出来れば家でも叩かないでくれ、、と今ならツッコミを入れられるのだが)

俺は終始うつむいたままいた、、何かしらのやり取りが終わったようだ。

その後、石野から俺に対する体罰行為は無くなった。

無くなったのだが、しかし!

彼は変わる事は無かった、俺に対してだけやり方を変えて来たのだ。

とある日、僕は又何かしら問題を起こしたとの事で石野は授業中皆んな注目させるように 『バキその場で立て!お前は悪い事をした、でもお前を殴ると母ちゃんが出てくるから、このクラスでお前と仲のいい奴を3人選べ!お前の代わりにそいつらを殴る』 と言い出した。

一体この人は何を言っているんだ?本当に理不尽な奴だ、そういう問題じゃないのに。

石野はただ単に俺を殴らなくなったと言うだけで体罰をやめると言う選択肢はなかったのだ。

それから俺は3人の名前を口にする他無かった…言うまで帰らせない、みんなの授業の時間をお前が奪ってると責め立てられ、勉強をしたいクラスの数人からも「バキ早くしてよ〜」と言われ、名前を口にした友人3人からも後から責められる事になった。

石野は肉体的な苦痛が与えられなければ、精神的な苦痛を与えれば良いと思っている人間だった。

ただ、この話の未来には少しスッキリした結末がある。

それは俺が小学校を卒業してから数年経って風の噂で聞いた話だ。

平成になり世の中は少し良い方向へ進んだんだと思う『石野が体罰問題で飛ばされたらしいよ?』と聞いた時、心の中で(やっとか…)と安堵したのを今も忘れない。

その後、成人した俺は小学校の同窓会でゲストとして呼ばれていた石野と再開した、白髪混じりで少し衰えてた彼を見て、小さくて怯えてたあの頃と違って、彼の暴力にもう恐れる事もないと心の中で赦せたんだと思う。

その時に俺の中で起きていた彼への恨みの支配から完全に解き放たれた気がした。

※かなり話が飛んでしまって申し訳ない、今まで語れなかった事を沢山残せた事に感謝します。